【特集】賃金月額は3.8%の大幅増、バブル期並み高水準(その1)
- 川西 康夫
- 5月5日
- 読了時間: 3分
更新日:5月6日
~令和6年「賃金構造基本統計調査」の結果公表を受けて~
厚生労働省は3月17日、「令和6年賃金構造基本統計調査」の結果を公表しました。この調査は、主要産業の賃金の実態を明らかにすることを目的として、毎年6月分の賃金について7月に調査を実施し、翌年3月頃に結果を公表しているものです。今回公表されたのは、令和6年(2024年)6月分の賃金について、10人以上の常用労働者を雇用する全国50,682の民営事業所の調査結果を集計したものです。
■前年比3.8%増加は平成3年(1991年)以来の高水準
一般労働者(短時間労働者を除く)の賃金月額(男女計)は33万400円となり前年比3.8%の大幅増、男女別では男性36万3,100円(同3.5%増)、女性27万5,300円(同4.8%増)でした。増加率はいずれもバブル期の平成3年(1991年)以来33年ぶりの高水準となります。男女間賃金格差(男性=100とした場合の女性の賃金指数)は75.8(前年差1.0ポイント上昇)となり、比較可能な昭和51年(1976年)以降で格差が最も縮小しました。


日本の賃金水準は、バブル経済の崩壊後、約30年間にわたり停滞を続けてきました。この調査においても、一般労働者の賃金月額は、平成6年(1994年)までは前年比2%以上のペースで増加を続けていましたが、今からちょうど30年前の平成7年(1995年)に前年比1.0%を記録して以降、±1.5%の範囲で停滞を続け、令和4年(2022年)までの27年間、一度も2%を超えることがありませんでした。一般労働者の賃金月額(男女計)を平成7年と令和4年で比較すると、平成7年に29万1,300円であったものが、令和4年には31万1,800円となっており、27年間の増加額はわずか2万500円、増加率7.0%とほぼ横ばいの状況になっていました。

一方、令和2年と令和6年を比較すると、30万7,700円から33万400円へと増加(増加額2万2,700円、増加率7.4%)しており、たった4年間で27年間の増加幅を上回っています。

■なぜここまで賃金が上昇しているのか?
このように、これまで約30年間という長期間にわたって停滞していた日本の賃金水準が、この数年で大きく上昇し始めています。この背景には、以下の3つの要因があるものと考えています。
① 生産年齢人口の減少に伴う慢性的な労働力不足 ② 全国平均1,500円を目標としたマクロ経済政策としての最低賃金の引上げ ③ ロシアによるウクライナ侵攻やその他の国際情勢に起因する急激な物価上昇 |
要因①の労働力不足について、日本の総人口(外国人を含む)は平成23年(2011年)から継続的な減少に転じており、令和5年(2023年)までの13年間で約370万人という大幅な人口減少を記録しています。特に、いわゆる「現役世代」である15歳から64歳までの生産年齢人口の減少幅が大きく、平成7年(1995年)に約8,726万人だったものが、令和5年(2023年)には約7,395万人にまで減少しています。28年間で1,330万人を超える急激な減少であり、総人口に占める生産年齢人口の割合も69.5%から59.5%へと10ポイント低下しています。

こうした生産年齢人口の減少、特に団塊世代の定年退職等によるリタイアや若年層の人口減少により、近年では慢性的な人手不足と採用難が常態化しています。今や労働市場は完全な「売り手市場」であり、これが賃金水準を押し上げる要因のひとつとなっています。今回の調査でも、新規学卒者の賃金(初任給)は、昨年に引き続き大幅に増加しています。

(その2へ続く)
※この記事は、事務所だより2025年3月号より転載したものです
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