パーソル総合研究所は11月18日、「職場のハラスメントに関する調査」結果を発表しました。この調査は、職場のハラスメントに関する実態や課題について定量的なデータで把握し、提言を行うことを目的に、全国の20~69歳の就業者28,135人を対象に実施したものです。
この調査では、2021年におけるハラスメントを理由とした離職者数を全国で約86万5千人と推計しています。うち約57万3千人が退職理由としてハラスメントがあったことを会社に伝えられずに退職に至っており、会社が社内でのハラスメントの実態を把握できていないとしています。業種別では、「宿泊業・飲食サービス業」(17.9%)、「医療・福祉」(14.4%)、「卸売業・小売業」(12.6%)で離職者が多くなっています。
全就業者の34.6%が、職場で過去にハラスメントを受けた経験があると回答しています。被害内容としては、「自分の仕事について批判されたり、言葉で攻撃される(65.1%)」が最も多く、続いて「乱暴な言葉遣いで命令・叱責される」(60.8%)、「小さな失敗やミスに対して、必要以上に厳しく罰せられる」(58.8%)、「自分の仕事ぶりが低く評価され、成果を認めてもらえない」(51.2%)、「職場内で、必要な情報を教えてもらえない」(50.1%)などが多くなっています。 上司の立場からは、「飲み会やランチに誘わないようにしている」(75.3%)、「ミスをしてもあまり厳しく叱咤しない」(81.7%)など、ハラスメント回避的なマネジメントを心掛けている傾向が強くなっています。一方で、部下の立場からは、上司とのこうした心理的距離感を感じているほど、成長実感を得られていないという傾向があります。
同研究所は、ハラスメントへの社会的意識が高まっているにも関わらず、年間でおおよそ87万人ものハラスメントによる退職者が出ており、その半数以上が会社から把握されていない実態が明らかになったとしています。また、ハラスメントに対する見方が厳しくなるとともに、現場ではハラスメント回避的なマネジメントが常態化しているものの、そうした行動が上司と部下の間の心理的距離感を生み、部下の成長を妨げてしまっていると指摘しています。一方で、ハラスメント防止と部下の成長を両立させているマネージャーは、回避的なマネジメントではなく、メンバーの話を丁寧に聞き取る「傾聴行動」を多く行っているとも指摘。防衛的な施策だけではなく、職場での対話的コミュニケーションを促進するなど「育成志向のハラスメント対策」が検討されるべきであるとしています。
(ニュースリリース/パーソル総合研究所)
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