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執筆者の写真川西 康夫

【特集】年次有給休暇の基礎知識(1)年休の権利と付与日数

この記事は、事務所だより2023年2月号掲載の記事を再掲したものです。


■年次有給休暇の趣旨


 年次有給休暇は、労働基準法第39条に規定された法定の休暇制度です。この制度は、労働者の心身の疲労を回復させ、仕事と生活の調和にも資するという目的で、休日のほかに毎年法定以上の日数の有給の休暇を与えることを使用者に義務付けるものです。

 休日とは、雇用契約上の労務提供義務がない日をいいます。それに対して、休暇とは、労働者からの請求により、使用者がもともとあった労務提供義務を免除した日ということになります。


■年休権とその発生要件


 労働基準法第39条の規定により、労働者は年次有給休暇の権利を有することになります。この年休の権利は、法解釈上、労働者が年休を取得する権利(「年休権」といいます。)と取得する時季を指定する権利(「時季指定権」といいます。)の二つに分けて考えることとされています。

 年休権(年休を取得する権利)は、法定の要件を満たした場合に、法律上当然に発生する権利であるとされています。すなわち、就業規則や雇用契約に年休に関する規定がなかったとしても、法定の要件を満たせば労働者に年休を取得する権利が生じ、使用者には年休を付与する義務が生じるということです。年休権を有する労働者から請求されたにも関わらず、使用者が年休を付与しなかった場合、法令違反となり、罰則(6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金)の対象となります。正社員のみならず、パートタイマーやアルバイトも年休付与の対象となりますのでご注意ください。

 年休権の発生要件は、初回については、①雇入れの日から6か月間継続勤務し、②その期間の全労働日の8割以上出勤すること、2回目以降は、①雇入れの日から6か月経過した日(「基準日」といいます。)から1年間継続勤務するごとに、②その期間の全労働日の8割以上出勤することです。ここでいう「継続勤務」とは、雇用契約が存続する期間、すなわち在籍期間をいいます。また、「全労働日」とは、雇用契約上の労務提供義務がある日、すなわち休日を除いた出勤日をいいます。休日出勤をしたとしても、その日は「全労働日」に含まれません。そのほか、使用者側に起因する休業日やストライキ等の争議行為により労務提供がなされなかった日についても、「全労働日」には算入しないこととされています。一方で、①業務上の傷病(ケガや病気)で休業した期間、②産前産後休業期間、③育児・介護休業期間、④年休取得日については、「全労働日」に含めた上で出勤したものとみなします。

 年休権が発生する時期は、各年の基準日です。基準日が10月1日であれば、毎年10月1日に年休権が発生することになります。ただし、基準日前日までの1年間の出勤率が8割未満の場合、その年の基準日には年休権は発生しないことになります。


■年休権の有効期間は2年間


 年休権の発生により付与された年休のうち、付与日から1年以内に取得せず、未取得のまま残った日数については、さらに1年間繰り越すことができることとされています。これはなぜかというと、年休権の有効期間が2年間とされているためです。労働基準法第115条において、同法の規定による請求権のうち、賃金請求権は5年(経過措置により当面3年)、その他の請求権は2年で時効消滅すると定められており、その規定が適用されているのです。


■年休の付与日数


 労働基準法に定める年休の付与日数は、基準日(雇入れの日から6か月経過した日)と基準日以降の継続勤務年数により下表のとおり定められています。所定労働時間が週30時間未満で、所定労働日数が週4日以下(週以外の期間によって所定労働日数が定められている場合は、年間216日以下)の労働者については、所定労働日数に応じて一般の労働者よりも少ない日数を付与することとされいます。これを年休の「比例付与」といいます。なお、所定労働時間が週30時間未満であっても、所定労働日数が週5日以上の場合は比例付与の対象とはなりませんのでご注意ください。



(2)へ続く


社会保険労務士 川西 康夫

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