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  • 執筆者の写真川西 康夫

技能実習制度の廃止と新制度の創設などを提言

~有識者会議が中間報告を取りまとめ、法務大臣に提出~


 外国人が日本で企業などと雇用関係を結び、出身国での修得が困難な技能の修得を図る「技能実習制度」と、特定の産業分野で専門性・技能を有する外国人を雇用する「特定技能制度」について、制度の施行状況を検証しながら適正な制度運営に向けた見直しの方向性について検討してきた出入国在留管理庁の「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」(座長:田中明彦・独立行政法人国際協力機構理事長)は、5月11日、中間報告をとりまとめ、関係閣僚会議の共同議長である法務大臣に提出しました。

 中間報告では、現行の技能実習制度を廃止し、人材確保と人材育成を目的とする新制度の創設を検討することや、技能実習生の転籍制限を緩和することなどを提言しています。有識者会議は今後、中間報告で示した検討の方向性に沿って具体的な制度設計について議論し、2023年秋をめどに最終報告をとりまとめる予定です。

 中間報告の主な内容は以下の通りです。


1.技能実習制度の目的と実態がかい離

 「制度目的と実態をふまえた制度のあり方」では、現行の技能実習制度の目的は本来、人材育成を通じた国際貢献であり、労働力の需給調整の手段としてはならないという基本理念を掲げているにもかかわらず、実情は「技能実習生が国内の企業等の労働力として貢献しており、制度目的と運用実態のかい離が指摘されている」と言及。こうしたことを鑑みると、「今後も技能実習制度の目的に人材育成を通じた国際貢献のみを掲げたままで労働者として受入れを続けることは望ましくない」との見方を示し、「現行の技能実習制度を廃止して人材確保及び人材育成を目的とする新たな制度の創設を検討すべき」と提言しました。

 一方、特定技能制度については、深刻な人手不足に対応するため、「制度を見直して適正化を図った上、人材確保と人材育成を目的とする新たな制度との調和を図りつつ、引き続き活用していく方向」での検討を提案。その際、新たな制度との関係性に加えて、受入れ見込み数・分野の設定のあり方や行政の指導監督体制、特定技能外国人への支援体制の整備などについて、引き続き議論するとしています。


2.新制度から特定技能制度への移行を円滑化

 「外国人が成長しつつ、中長期的に活躍できる制度(キャリアパス)の構築」については、まず、対象職種などについて言及。現行、技能実習制度で技能実習2号(入国3年後に修了)を修得している外国人は、通常受けるべき特定技能試験・日本語能力試験を免除された形で、特定技能1号の在留資格に変更し、さらに5年間在留することができます。一方、この方式の移行は、技能実習を行っていた分野しか選択できないという要件が存在しており、両制度の対象職種分野に不整合が生じている現状があることから、「新たな制度から特定技能制度への移行が円滑なものとなるよう、その対象職種や分野を一致させる方向で検討すべき」としています。


3.スキルアップの見える化を前提に幅広い業務に従事できる制度に

 外国人が修得する主たる技能などについて、「育成・評価を行うことによるスキルアップの見える化を前提として、特定技能制度への移行を見据えた上で体系的な能力を身に付ける観点に立って幅広い業務に従事することができる制度とする方向で検討すべき」と主張。技能評価のあり方については、技能検定や技能実習評価試験などの運用状況も踏まえながら、最終報告に向けて引き続き議論するとしています。

 このほか、「日本の企業等が魅力ある働き先として選ばれるためには、日本で修得した技能等を更に生かすことができる仕組みの構築が必要」だとして、現行の両制度の全ての職種や分野、特定技能2号(在留期間の上限なし)の対象分野について、追加や、その設定のあり方について、必要性があることを前提として検討することを強調しています。

 「受入れ見込み数の設定などのあり方」については、現行、技能実習制度には上限が設定される一方、特定技能制度は上限が設けられていないが、両制度ともに「業所管省庁における取組状況の確認、人手不足状況や国内労働市場に与える影響の確認、受入れ見込数の設定及び対象分野の設定については、労使団体などの様々な関係者の意見やエビデンスを踏まえつつ判断がされる仕組みとするなど透明性や予見可能性を高める」方向で議論していくとしました。


4.技能実習制度の転籍制限を緩和する方向で検討

 「人権侵害の防止その他外国人にとっても我が国にとってもプラスとなる仕組みとするための方策」では、まず、技能実習制度における「転籍の在り方」について方向性を整理。

 現行は、限られた時間内に計画的・効率的に技能を修得する観点から、1つの実習先で実習を行うことを原則としている(特定技能制度は同一の業務区分内など要件を満たせば転職可能)が、新たな制度では「人材育成そのものを制度趣旨とすることに由来する転籍制限は残しつつ、制度目的に人材確保を位置付けることから、労働者としての権利性をより高め、また、制度趣旨及び対象となる外国人の保護を図る観点から、従来よりも転籍制限を緩和する方向」での検討を求めました。

 その際の転籍制限のあり方については、受入れ企業などにおける人材育成に要する期間やコスト、労働法制との関係など、新たな制度の目的である人材確保・人材育成との関係を踏まえて引き続き議論するとしています。また、人権侵害や法違反などがあった場合に、外国人が権利行使しやすくする救済の仕組みや転籍先を速やかに確保する方策について、現行の運用状況を踏まえて具体的に議論していくとしました。


5.監理団体や登録支援機関の要件を厳格化

 「管理監督や支援体制の在り方」では、技能実習制度における監理団体や、特定技能制度における登録支援機関が担っている機能の重要性を指摘する一方、受入れ企業などにおける人権侵害や不適切な就労を防止・是正できていない監理団体や、外国人に対する支援を適切に行えない登録支援機関もあることから、ともに厳しく適正化・排除する必要性を強調しました。

 そのうえで、新たな制度では、国際的なマッチング機能や支援などの機能を適切に果たすことができる優良な監理団体と、外国人労働者に必要とされる支援を適切に行う機能を有する優良な登録支援機関のみが認められるよう、監理・保護・支援等の要件を厳格化することを提言。なお、受入れ企業などが安心して優良な監理団体・登録支援機関を利用できるように、その事業活動の評価などを公表し、特に受入れ企業などへの支援や外国人労働者保護の面で優良な団体などにはインセンティブを与えるなど、機能や要件について具体的に議論するとしています。

 外国人技能実習機構が担ってきた法令に基づく監督指導や相談窓口などの援助は、「一定の効果があり適正な受入れに不可欠であることから、その役割に応じた体制を整備した上で引き続き活用」し、管理・支援能力の向上を図るとしました。

 また、送出機関や送り出しのあり方について、悪質な送出機関などが関与し、外国人本人が職業紹介において発生するコストについて、不当な費用を負担して多額の借金をする可能性もあることから、排除などのさらなる対応の必要性を提示。「過大な手数料の徴収の防止や悪質な送出機関の排除や送出機関の適正化に向けて、新たな制度においても、相手国との間で実効的な二国間取決め(MOC)を締結するなど、外国人材の適正な受入れに関する国際的な取り組みを強化する」ことを打ち出しています。

 「外国人の日本語能力の向上に向けた取り組み」については、就労開始前の日本語能力の担保方策や、来日後の日本語能力が段階的に向上する仕組みを設けることなどを提言しました。


(ビジネス・レーバー・トレンド/独立行政法人労働政策研究・研修機構)



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