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【特集】賃金月額の上昇幅、5年間で10%を超える

  • 執筆者の写真: 川西 康夫
    川西 康夫
  • 6 時間前
  • 読了時間: 5分

~令和7年「賃金構造基本統計調査」の結果公表を受けて~

 

社会保険労務士・人的資本経営コンサルタント 川西 康夫

 

 厚生労働省は3月24日、「令和7年賃金構造基本統計調査」の結果を公表しました。この調査は、主要産業の賃金の実態を明らかにすることを目的として、毎年6月分の賃金等について7月に調査を実施し、翌年3月頃に結果を公表しているものです。今回公表されたのは、令和7年(2025年)7月に実施した調査について、10人以上の常用労働者を雇用する民営事業所の調査結果を集計したものです。


■賃金月額は前年比3.1%の増加、高水準の賃金上昇が続く

 一般労働者(短時間労働者を除く)の賃金月額(男女計)は340,600円(前年比3.1%増、男性は373,400円(同2.8%増)、女性は285,900円(同3.9%増)でした。昨年に続き、男女計で増加率3%を超える高水準の賃金上昇が続いています。

男女間賃金格差(男性=100とした場合の女性の賃金指数)は76.6(前年差0.8ポイント上昇)と昭和51年(1976年)以降の最高値となり、格差縮小が継続しています。




 賃金月額及び対前年増減率の過去5年間の推移をみると、上の表のようになります。令和3年はコロナ禍の影響もあって増減率は8年ぶりのマイナスでしたが、令和4年以降は慢性的な労働力不足や最低賃金の引上げ、急激な物価上昇等の影響により増減率はプラスに転じ、令和7年も高水準を維持しています。直近の増加率のピークは令和6年の3.8%で、バブル期の平成3年(1991年)以来となる33年ぶりの高水準でした。

 男女を比較すると女性の方が増加率が高い傾向にありますが、女性の方が最低賃金に近い金額の賃金で働いている人が多いため、最低賃金引上げの影響を受けやすいことがその一因と考えられます。この高い賃金増加率が、男女間賃金格差の縮小に大きく寄与しています。



 令和7年の賃金月額を5年前の令和2年と比較すると、上の表のようになります。賃金月額(男女計)は、令和2年の307,700円から令和7年の340,600円へと大きく増加しており、増加額は32,900円、増加率は10.7%と5年間で10%を超える大幅な上昇となっています。日本の賃金水準はバブル崩壊後の約30年間にわたり停滞を続けてきましたが、5年間で10%を超える大幅な上昇はバブル期に匹敵するもので、これは間違いなく歴史的な転換点だと言えるでしょう。

 男女別にみると、男性は令和2年の338,800円から令和7年の373,400円へと増加しており、増加額は34,600円、増加率は10.2%でした。一方、女性は令和2年の251,800円から令和7年の285,900円へと増加しており、増加額は34,100円、増加率は13.5%でした。女性の増加率が男性の増加率を大きく上回っています。


■賃金の増加は物価の上昇に追いついているのか?

 ここで気になるのが、最近の急激な物価上昇との関係です。令和7年(2025年)の消費者物価指数(総合指数)は111.9であり、令和2年(2020年)と比較して11.9%の大幅な上昇となっています。グラフで見ても分かるように、最近ではバブル期を上回るような急激な物価上昇となっており、特に、総合指数(黒太線)が食料及びエネルギーを除く総合指数(赤点線)を上回っていることから、食料品や光熱費などの価格が大きく上昇していることが見て取れます。このように、賃金の増加は物価の上昇には追いついていないのが現状です。




■大企業と中小企業の賃金格差は拡大傾向にある

 もうひとつ気になるのが、企業規模による賃金格差です。ここまでの集計結果は10人以上の事業所すべてを平均した数値でしたが、この調査では常用労働者数1,000人以上を「大企業」、100人以上1,000人未満を「中企業」、10人以上100人未満を「小企業」と定義して、企業規模別の集計も公表しています。



賃金月額と増減率を企業規模別に集計すると、上の表のようになります。賃金月額(男女計)は、「大企業」では385,100円(前年比5.7%増)と大幅に増加しているのに対して、「中企業」では326,200円(同1.0%増の増加にとどまっています。さらに規模の小さな「小企業」では305,600円(同2.1%増となっており、「中企業」より賃金月額は少ないものの、増加率では上回るという結果になっています。このように、賃金の増加は規模の大きな企業に偏っているのが現状であり、大企業と中小企業との賃金格差は拡大する傾向にあります。

また、賃金の増加率を男女別にみると、「大企業」では男性6.1%、女性4.8%と男性の方が上回っていますが、「中企業」では男性はわずか0.1%であるのに対して、女性は3.2%と大きく上回っており、「小企業」でも男性1.6%、女性3.3%と女性の方が上回る結果になっています。意外な結果ですが、これも最低賃金との関係が考えられます。つまり、「中・小企業」の女性には最低賃金に近い金額の賃金で働いている人が多いため、最低賃金の引上げによって賃金を引き上げざるを得ず、結果的に増加率が高くなっているものと思われます。

 

■まとめ:今後の課題は賃上げ原資の確保

 今回の調査では、労働力不足や最低賃金の引上げ、物価上昇等を背景として、賃金水準の大幅な上昇が継続している傾向が読み取れました。その一方で、賃金引上げの対象が、もともと賃金水準の低かった女性や賃上げ余力のある大企業に偏っている傾向も顕著になっています。

筆者は昨年の時点で、今後の賃金増加率は毎年4%を超える水準になるのではないかと予想しておりましたが、調査結果では賃金月額(男女計)の増加率は3.1%にとどまりました。中小企業を中心にいわゆる「賃上げ疲れ」の状況にあることが窺えます。今後は中小企業においてもさらなる価格転嫁を推進し、適正価格を実現することで賃上げ原資を確保することが重要な課題となります。(了)

 
 
 

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