日本生産性本部は11月9日、第11回「メンタルヘルスの取り組みに関する企業アンケート調査」の結果を発表しました。この調査は、2023年7月から9月にかけて、上場企業2,847社の人事担当者を対象に実施し、169社(5.9%)から回答を得たものです。
自社における「心の病」が「増加傾向」と回答した割合は45.0%となり、前回調査(2021年)の22.9%と比較して大幅に増加する結果となりました。これは「増加傾向」と「横ばい」の順位が入れ替わった2010年以来の高水準となっています。また、「横ばい」と回答した割合が前回調査の59.7%から45.0%へ低下しただけでなく、「減少傾向」と回答した割合も前回調査の11.1%から5.9%に低下しており、ストレスチェック等のメンタルヘルス対策の効果を上回る大きな変化があったものと推察される、とと考察しています。たとえば、コロナ禍を発端とする働き方や職場の在り方の変化、そしてそれらの変化への順応プロセスによる影響の可能性が考えられる、としています。
「心の病」が最も多い年齢層について尋ねたところ、「10~20代」との回答が43.9%(前回調査29.0%)に急増し、初めて「30代」の26.8%(同39.9%)を上回り、全ての世代で最も多くなりました。これまでは「心の病」が30代に多い理由を、仕事の責任は重くなるが管理職にはなれない「責任と権限のアンバランス」にあると考察していましたが、今回は「30代」、「40代」との回答が減少する一方、「10~20代」との回答が急増しており、これまでとは大きく様相が異なっています。このような変化について、調査結果だけでは判断できないとしつつ、コロナ禍で入社した若手層がテレワーク等で対人関係や仕事のスキルを十分に積み上げることが出来ない中で、コロナウイスル感染症の5類移行に伴う出社回帰への変化が大きなストレスになったとも考えられる、と指摘しています。
一方、従業員エンゲージメントと「心の病」の関連性について、従業員エンゲージメントが高いと思われる企業は、そうではない企業に比べて「心の病」が「増加傾向」と回答した割合が低い傾向がみられます。「従業員エンゲージメントが高いと思われる企業」とは、今回の調査においては、「従業員が組織・職場とのつながりを感じにくくなっている」に「そう思わない」と回答した企業、または、「会社の理念や経営方針は従業員に浸透している」に「そう思う」と回答した企業を指しており、このような企業は、そうではない企業に比べて「心の病」が「増加傾向」と回答した割合が10ポイント以上低くなっています。
(調査研究・提言活動/公益財団法人日本生産性本部)
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