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【特集】賃金月額は3.8%の大幅増、バブル期並み高水準(その2)

  • 執筆者の写真: 川西 康夫
    川西 康夫
  • 19 時間前
  • 読了時間: 3分

更新日:8 時間前

~令和6年「賃金構造基本統計調査」の結果公表を受けて~


 要因②の最低賃金の引上げについて、政府は都道府県ごとに設定される地域別最低賃金の全国加重平均額を2020年代に1,500円(時給額)に引き上げることを目標に掲げています。現在の全国加重平均額は1,055円(令和6年(2024年)10月改定額)ですので、令和11年(2029年)10月の改定でこの目標を達成するとした場合、今後5年間で445円、平均して毎年89円の引上げを行う必要があります。

 日本を代表する労働政策の研究者である労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎氏は、2025年2月6日に兵庫県西宮市内で行われた講演において、この最低賃金引上げをめぐる政府の方針について述べ、従来の最低賃金をめぐる政策があくまで労働政策として位置づけられていたのに対して、現在では経済成長を実現するためのマクロ経済政策としても位置づけられていることを指摘した上で、最低賃金引上げを推進する方針には、今後当面の間、変更はないであろうとの見解を示しました。これはどういうことかというと、最低賃金を引き上げることにより、最低賃金やそれに近い水準の低賃金で働いている労働者の賃金はもとより、より高い賃金を受けている労働者を含むすべての労働者の賃金水準を底上げする効果があることが指摘されているのです。政府は、最低賃金を引き上げることにより賃金水準全体を押し上げ、いわゆる「賃上げと物価上昇の好循環」により経済成長を実現することを意図しているということです。

 過去3年間の賃金増減率と最低賃金の引上げ率を比較してみると、以下の表のようになります。ちなみに、令和6年10月の改定で最低賃金は全国平均1,055円となり、引上げ率は+5.1%でした。これが賃金水準の全体的な底上げにどの程度の影響を及ぼすのか、令和7年の調査結果に注目したいと思います。



■物価上昇により企業に対する賃上げ圧力が強まる

 要因③の物価上昇について、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻に伴う経済制裁、さらには、2025年1月に発足したアメリカのトランプ政権による関税政策その他の国際情勢により、この数年間は世界規模でインフレが進行しており、日本も例外ではありません。日本国内の急激な物価上昇を背景として、企業に対する賃上げ圧力が強まっています。

 令和6年(2024年)の消費者物価指数(総合指数、2020年=100)は108.5であり、前年の105.6と比較して2.75%の伸びを示しているほか、令和4年(2022年)の102.3と比較すると、2年間で6.1%もの大幅な上昇となっています。これはバブル全盛期の平成2~3年(1990~91年)の水準に匹敵するもので、近年にない急激な物価上昇といえます。



■今後は賃上げの可否が企業の命運を決める時代に

 今回の調査では、①慢性的な労働力不足、②経済政策としての最低賃金の引上げ、③急激な物価上昇等の要因により、賃金水準が全体的かつ大幅に上昇している傾向が読み取れました。個人的な見解として、今後も当面の間、賃金水準の上昇が継続するものと予想しており、最低賃金の引上げ幅にもよりますが、賃金増加率は毎年4~7%程度になるものと見込んでいます

 賃金増加率と物価上昇率がともに毎年5%だと仮定した場合、月給が20万円なら1万円、30万円なら1万5千円、40万円なら2万円、毎年昇給させる必要が出てきます。昇給させなければ、従業員の賃金は世間相場の上昇から取り残され、物価上昇により収入は実質マイナスとなるため、その従業員はより高い賃金を求めて会社と交渉するか、他社に転職するか、いずれかの方法を選ぶことになるでしょう。今後は、企業の成長には継続的な賃上げが必須であり、さもなくば確実に衰退の道を辿ることになります。賃上げの可否が企業の命運を決める時代が到来したのです。(了)


※この記事は、事務所だより2025年3月号より転載したものです

 
 
 

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